「月の輪熊は、僕たちの仲間です」
- 公彦 漆

- 12月9日
- 読了時間: 3分
母さんは、南のほうから聞こえてくる月の輪熊の「やまびこ通信」をキャッチしていたようだ。だから母さんの決意も早かった。
僕は、ヒロシのお陰で人間の言葉を少しは分っていたから、人間たちの作戦をキャッチ出来た。人間たちは、僕たちに何か恐ろしいことをしようとしていると。
だから母さんの考えには、大賛成だ。だけど、不安もいっぱいだ。
昔、狼が人間の手で、一匹残らず殺された事を考えると人間は残酷で恐ろしい。大きないくさになったら、武器を持たない僕たちは、負けてしまう。
だけど、人間の中にも、ヒロシの様な優しい人間もいる。
母さんは、僕には絶対に山から下りていくなと言いながら、今日も食料を求めて出かけていく。でもこの頃は、お腹いっぱいに蓄えてかえって来ない。
僕もおっぱいだけでは、お腹がいっぱいにならない。僕もいつまでも赤ちゃんじゃないから、食べ物を探しに行こう。
いつもの山道を歩いて、坂を下ると、直ぐ大きな道にぶつかった。人間の臭いがプンプンして来た。
ぼくは、勇気を出して、人間世界の入っていった。最初は怖ろしかった。人間の言葉もわかるようになって、母さんのも伝えた。母さんは、ヒータンはもう一人前だから「背に腹は代えられないね」と僕が一緒に行くことを許してくれた。僕はうれしかった。
そして、僕は母さんと一緒に、これからは、人間世界も生活圏に取り入れることにした。山の仲間にも、やまびこを使って、このことを伝えた。あちこちからやまびこが返って来た。このやまびこは、人間には聞こえてないようだ。
しかしいざ人間の生活圏に入ると、食べ物はどこにでもたくさんありそうだが、苦労が多い、危険が一杯だ。先ず道路が固く、爪が立たないから思うようにリズムに乗れない。スピードが出ない。人間は何をし出すか、本当に恐ろしい。
母さんは、昔人間は、熊が人里に入って行くと、迷って出てきたと思って、山に追い返してくれたが、今は、いきなり鉄砲をふりかざす。あちこちの山から「やまびこ通信」で、たくさん被害を知らせてくる。
もうすぐ雪の季節だ。冬眠までに栄養を蓄えて、山にかえって洞穴を探し、子作りをしなければならない。母さんは、焦る気持ちを隠せない。父さん早く帰って来てよ。
以下、次号へ
さて、熊騒動の報道が、少なくなったようです。初雪の知らせとともに熊は山に帰って、冬眠を始めたのでしょうか。
北海道、東北などの雪国は、冬眠無しでは、熊は生きてはいけない。写真は、手稲の国道で、手稲山の雪景色を撮影致しました。山の中腹まで、人間が作った様々な施設で、埋まっています。
山は、だんだん熊の住処、近郊の山はどんどん、熊の世界に侵食して行っています。




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