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「母さんの第二作戦」熊は、山奥に戻れるか 

母さんは、鹿の話をしてくれた。

鹿は山奥にも、人里にもたくさんいる。熊の何倍もいて、しょっちゅう僕たちの前で、木の実を食べている。追い払っても、直ぐ戻ってくるので捕まえようとするが、するっとかわして逃げられるので、森の中で捕まえることは難しい。

僕も母さんが死んだ鹿の肉をくわえてきて、食べさせてくれたことが在った。鮭よりは、うんと旨かった。

熊は皆、鹿がすばしっこいので、獲るとることを諦めている。鹿の肉がうまいのは、皆も知っている。よく人間が掛けた罠につかまった鹿を食べている。

熊は、親子で獲物を捕ることはあっても、狼のように集団で鹿を襲う方法はしたことがない。目の前にこんなにいい獲物があるのだから、皆で、チームを組んで、捕まえることを相談しよう。

若い熊は、皆頭がいいから、やれると思う。今から作戦を考えて、冬眠から醒めたら早速やってみよう。

人間は、僕たち若者を、アーバンベアと言って、怖がっているから、しばらく山の中で特訓だ。

母さんは「危険な人里より、山の奥で鹿を捕まえるほうが、よっぽど安全だ」と、僕も賛成だ。

また、母さんは僕に話しかけた。人間と話し合いが出来ないものかと。

母さんは、山の中には鹿がたくさんいる。今、人間は毎年何万頭も撃ち殺し、罠にかけ、全て人間の食料にして居る。

その半分でも、殺した鹿を山奥に残してくれれば、熊は、それを食料にして、冬を越すことが出来る。人里に降りてくる必要が無くなる。

鹿は、狼が居なくなって、どんどん増えて人里におりて、畑を荒らしまわっている。鹿は熊のように人間を襲わないが、人間が作った農作物は、熊の何百倍も多いはずだ。

僕は、急にヒロシを思いだした。僕たちが山に戻って、鹿を食べるようになったらどうなるか。僕の考えを聞いてもらいたい。ヒロシに会いたくなった。 

ヒロシに会って、僕たちが安全に山奥の生活が出来る道を尋ねてみたい。

母さんの知恵はすごい。                         


                   完


熊の母さんとその子供ヒータンの物語は、一旦終りとします。

 私が撮った札幌近郊の山に空閨は、だれもが知ってる藻岩山、手稲山、銭函近くの山の峰々です。いずれも山の頂上、中腹まで開発が進んで、私たちに生活圏に組み込まれています。しかし、遂百数十年くらい前まで、ヒグマの王国でした。狼もいました。

今は、熊や狼を追い払い、撃ち殺して、所有権を主張しています。このままでは、道内に生息する12,000棟のヒグマは、生息が出来ず、益々、人間とのニアミスを起こして、限りない殺生の繰り返しをエスカレートさせていきます。

この冬、ヒグマの声なき「やまびこ通信」に耳を傾けては、いかがですか。



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