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「やまびこ通信」は存在するか 

母さんは、父さんが帰ってこなかったので、相変わらず狭い穴倉で、ゴロゴロ寝返りがうるさい。まだ雪が少ないので、毎晩外に出て、おおきな声で叫んでいる。僕は「やまびこ通信」だと直ぐ分った。何を言ってるか、母さんは、結構大胆なことを考えて居る。

「やまびこ通信」は、今「やまびこネットワーク」になっている。

「やまびこ作戦」だ。なんかドキドキして来た。僕も仲間に入れてほしい。

母さんは「やまびこ通信」で、熊の仲間の団結を呼びかけているのだ。

「来春、人里は一段と人間の警戒態勢が厳しくなる。不用意に個人行動で人里に入って行くと、鉄砲で撃たれる。相手は、猟友会のおじいちゃんではない。住民は、ウオーと脅せば逃げるばかりだから怖くない。だが一旦人間にケガをさせると、警察・自衛隊というプロ集団が出てきて、鉄砲を向けて、執拗に追いかけてくる。確実に殺される」と、真剣に仲間を心配している。南の国の「月の輪ぐま」にも届いているはずだ。

母さんは続ける。

「先ず第一の作戦だ。冬眠から醒めても、直ぐ人里に降りないこと。木の葉っぱが茂るまで山を下りない事。親子の単位、単独で行動することは、危険だ。これからは、狼の様に、声を掛け合ってチームで夜間行動することが大事だ。

それと、人間たちに荒らされた自分の山を、自分で守る決意が必要だ。人間たちを山に入れない事だ。その為には、道路を封鎖する。 

仲間と相談して、皆で定期的に巡回する。決して人間を襲うな。ウオー!!と脅かすだけで、おしっこちびらせて逃げていく」

母さんは、僕に言う。

「道路を封鎖すれば、別荘地、ホテル、スキー場ゴルフ場、観光地など、人間は通行禁止をして、入ってこない。誰もいなくなったら、そこに残した食糧を頂く作戦だ。

これを皆で一斉にやったら、人間たちはお手上げだ。人間も自動車も来なくなる。山は静かになる。自然が好きだという、自然破壊者も来無くなる。自動車が来なければ、道路は「けものみち」になる。山は、山に生きる皆の物になる」と主張をつづけた。

母さんは、第二の作戦を「やまびこネットワーク」で仲間と相談しているようだ。

「熊が子孫を増やす為には、動物の肉が必要だ。鮭はいるが、登ってくる川が少なくなってしまった。

その代わり、鹿が山には沢山居る。鹿を捕らえるとができれば、人里に危険を犯して行くよりはるかにいい。そのためには、熊が狼のように仲間で、鹿を仕留めるやり方を覚えることが必要だ」と僕に持ち掛ける。

そうなると僕も身を乗り出す。仲間を救うことは、素晴らしいことだ。




以下、次号



北海道の鹿は、推計70万頭生息していて、毎年数万頭を捕獲して、食肉などに利用している。繁殖に捕獲が追い付かず、増え続けている。

熊も、1万2千頭で増加傾向です。

人間が、狼を絶滅させたり、鹿の保護をしたり、生息管理をはじめてしまうと、自然の生態系に介入してしまい、その先永遠に国民は予算(税金)を使っていくことになり、人間と言葉の通じない熊と戦いは果てしない。鮭の人工ふ化なども、人間が結果として、鮭が自然産卵できる環境を安易に破壊してしまった。



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