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ヒロシと会って

暗くなってヒロシが一人になり、昨日と同じいい匂いがして来た。ヒロシの一人言が始まった。

 ヒロシは、母さんが云うような恐ろしさをあまり感じない人間だ。僕はヒロシが、山の中で、一人で何を言いたいのか知りいと思った。

 次の日も、その次の日も寝ぐらに帰らず、母さんの心配をよそに、人間の作った大きな道路でヒロシの後を付けた。勿論、昼間は危険なので、夜走り続けた。僕の鼻で、ヒロシに居場所はすぐ分った。

一生懸命、ヒロシの言葉に、聞き入った。そのうち、不思議にヒロシの言葉が段々分って来た。「ヒロシは山が好きなんだ」と分かった。

 ヒロシは、どんどん山の奥まで入り込んだ。焚火には困ったが、いい匂いを嗅がせてくれた。

 僕はヒグマだから、人間の言葉は喋れない。僕はヒロシに、これ以上ヒグマの世界に入り込むと、命を落とすことを伝えたいと思った。

突然ヒロシの臭いが途切れ、僕の前から居なくなった。何故か寂しい気持ちになった。


僕は、ヒロシのお陰で、人間の言葉がもっと知りたいと思って、母さんの言い付けを守らず、その後も人間を観に行くことに決めた。ヒロシに、又会えるかもしれない。

僕の棲む山の中は、本当に静かだった。木の実も食べきれないほどあった。川には、魚もたくさんいた。秋には母さんが冬眠させてくれる。母さんは、僕は冬眠中に生まれたといった。

春がきて、洞穴から出ると、まぶしい光があふれ、山の中を遊び回った。人間の臭いは無かった。

が、この山奥に、人間の道が出来てしまった。僕たちにとって、人間の臭いは、恐ろしく命の危険そのものだ。もう道路の向こうは、僕たちが安心して住める世界にならない。安全に生きられる場でなくなるのだ。

次々人間がやってくる。自然が大好きと言って人間が来る。樹木を倒し、山を削る。僕たちが通る山道は寸断され、人間の臭いが、僕たちの食べ物を探す邪魔をする。

どんぐりや栗などの木の実は、どんどん少なくなり、毎日毎日、母さんは隣の山から又隣の山へ、人間に会わないよう用心しながら探し回る。

母さんは秋には、まるまる肥って、ゆきが降る頃には、山奥の洞穴で、僕と冬眠に入る。

だけど、今年は母さんがあんまり肥っていないのが心配だ。母さんは心配するなと言う。

雪がふり始めても、母さんは、僕を寝かせて、出かけた。

朝、母さんが帰って来た。柿の匂いだ。この日のおっぱいは、いつもよりおいしかったが、母さんはかなり疲れた様子で、僕は心配になった。

でも、雪がどんどん降り、母さんは洞穴から出られなくなった。待ちに待った冬眠だ。

以下、次号にて




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