雪解けの遅い4月6日の昼休みのころ、少し寒い曇り空に日差しが出て、青空が広がりました。家内に誘われて石狩大橋を越えて高岡に向かいました。
石狩川は、雪解け水が川幅一杯に、黒い色をして恐ろしいように流れていました。早春の緊張する風景です。
浜益に向かう道を当別方向に右折すると、すぐに田んぼが広がり、既に雪解け水がたまった処、まだ雪に覆われて寒々しい処、同じように日が当たっていながら、何故違うのかと思いながら走ると、ほどなく最初の信号に掛かります。そこを左折すると、高岡地区です。
その名の通り心地よい高台と谷間が交錯して起伏があり、開拓者たちが苦労して作り上げた田園が広がります。
少し進んでいくと二又に差し掛かり、左手に坂下ると、新たな田んぼが広がります。今年こそは、白鳥に会えるかと期待に胸を膨らまて下り坂に入ったところで、フロントガラス越しに凝視すると、無数の白い点々が、微妙に動いていました。
「白鳥だ!」数年ぶりの白鳥との出会いでした。エンジン音を立てないように歩くような速さで砂利道を近づいて車の中からスマホのシャッターを切り続けました。
白鳥たちは、田んぼの泥んこに嘴をつっこんで、夢中で稲株を掘って根っこの柔らかい処を噛み切っている様子でした。
さらに近寄って行くと、いやいやをするように逃げて行く仕草をしますが、ここは自分たちの領地だと言わんばかりに、見向きもせず食欲を満たし続けます。
これからシベリアに向かって旅立つ、つかの間の休息と、ここで体力を付けていかなければこれからの気の遠くなる様な無着陸飛行の旅の支度と、神聖な本能のままに振る舞うけなげな姿に、言葉もなく感動がこみあげてきます。
遠くまで見渡すと、白い点だったのが、全て白鳥一羽一羽のしっかりとした姿になり、ざっと千羽は超えると思われました。家内が「今までに見たことのない数だ」と言います。おそらく、この数日には、編隊をつくって旅立つのでしょうか。
ここは、昨年秋にシベリアから渡って本州まで行って冬を過ごし、又故郷に向かう旅の中継地点です。私が30年ほど前に山形県酒田市で単身赴任で過ごした時、地元の同僚に誘われて真冬の最上川河口に数千羽は居ると思われる白鳥、マガモ、雁などの大群を見せてもらい感動したものですが、その一群がここに立ち寄ってくれているのかと勝手な想像をして、懐かしさと愛おしさが、いつもあふれてきます。
彼らと少し離れた処で狐が一匹とカラスが一羽、突っつき合ってじゃれていましたが、写真には取れませんでした。
故郷のロシアは、ウクライナで戦争を仕掛け、地上は地獄絵を描いていることも知らずに故郷を目指す。
兎に角、無事の旅を祈るばかりです。
「かえって来いよ、かえって来いよ、かえって来おーいよおーー」
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